居酒屋まるめ

表題はあれですけど居酒屋のことは基本書かないと思います。好きな音楽・本・映画、服・靴・時計・小物etcについてお気楽に…

東京駅100周年記念Suica 獲得戦争に敗れたお話

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【追記】週開けて月曜朝、JR東日本は、今回の記念Suicaを希望者全員に販売すると発表した、と複数の報道機関で報道。(追記ここまで)




今回の東京駅100周年記念Suicaの発売については、Twitterでフォローさせていただいている方が9月下旬の発表と同時に言及されていたので、私もそのタイミングで知ることができた。

 

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Pasmoデビュー」の記念Suica/Pasmoが2007年3月に発売されているが、このときはそれぞれの上限のPasmo3枚・Suica5枚を上野駅に行列して購入している。京成上野駅に並び始めたのは発売開始の朝9時の一時間前くらいで、大した行列でもなく、3枚のPasmoを買ったらすぐにJR上野駅に移動して、行列の最後尾について1時間かそこらで5枚のSuicaが買えたように記憶している。買ったPasmoSuicaは、1枚は7年後の今でも私が定期として使っていて、残りは2枚は家族、5枚は一部は購入直後に、一部は数年後、私の周囲の人に買われたり*1何かの機会に贈答用として用いたりして、もう手元には残っていない。「(必要以上に購入する)おめーみてーのがいっから本当に欲しい人が買えないんだ」みたいな批判はあるだろうが、それを言うなら「本当に欲しい」って何だ? って話になるので、別に悪いことをしているとは思っていない。*2その後もいくつもの限定Suicaが発売されたわけだが、私はそれほど鉄分が多い方ではないので、発売が耳に入らなかったり、あるいは食指が伸びなかったりで、限定Suicaシーンからは離れていた。Suicaのペンギンはとても好きで、2011年? の暮れに酔っぱらって新宿伊勢丹の中をフラフラしていたら、伊勢丹アートギャラリーでSuicaのペンギンの作者であるところのさかざきちはるさんの版画が売っているというので行ってみたら何とさかざきさん御本人が来訪されており、ペンギンの版画を買ってサインをもらって一緒に写真を撮ってもらったこともある。その私でさえ、Suicaのペンギン好きの私でさえ、今回の東京駅100周年記念Suicaはペンギンなしのデザインにもかかわらず手に入れたいと思ったのである。

 

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以前会社を辞めて転売で生きていくことをそこそこ真剣に検討していた時期があり、この手の限定ものについては発売のルールを聞けば、入手に掛かるおおよその労力を瞬時に算出できる能力が私にはある。今回の、「15,000枚限定・発売は東京駅のみ・土曜日朝8時から・おひとりさま3枚まで」という条件は、私が参戦するのに「アリだな」と思わせたのである。スイッチが入ったのである。9月下旬に発売を知ってから、週に一度は「12月20日(土)は記念Suica」「12月20日(土)は記念Suica」と反芻する日々が始まったのである。

 

12月に入ると、確実に購入するための手段を具体的に検討するフェーズに移行する。2007年の際は発売開始の1時間前に並び始めて余裕で買えたわけだが、当時と今とでは状況が違う。遅くとも私の住む町から始発で行く必要があると考えた。東京駅に着くのは6時14分である。が、確実に手に入れるには6時14分では遅いかもしれない。東京駅や羽田空港を早朝利用する旅行者を対象としたバスが近所から出ていて、これに乗れば6時前に東京駅に行くことができる。先日「吉田類と仲間達 Vol. 7」のために買ったレジャーシートがあり、アウトドア好きとしては手持ちのウェアの防寒性能を発揮させるチャンスとして丸の内口前での野宿も選択肢の一つとしてなくはなかったが、もう40だからということで、このバスに賭けてみるつもりだった。

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私は全くTVを見ない生活をしているのだが、この記念Suicaの情報を調べていくと、どうも各種メディアでは盛んに東京駅100周年について報道されていて、中にはこの記念Suicaについて言及しているものも少なくないらしい。20日が迫るにつけ、「本当に早朝バスでいいのか」という疑念が高まっていったのだ。

 

2ちゃんねるなんかでは「徹夜とかw ありえねーからww」「1万5千あんのに買えない心配とかバカなの?死ぬの?」って論調が一般的だが、これはライバルを蹴落とすための工作であり、まったく無視すべき意見である。そして19日になり、昼休みに食事に出た先でスマホで状況を確認すると、どうも東京駅に行列が形成されつつあるというのだ。

 

今回は確実に購入する必要があったので、最初の5000人に入っていなければならない。また、買えるか買えないかわからない状態で並びたくない。早朝バスで東京駅に6時前に到着して、そこに5000人が詰めかけている光景は想像できなかったが、私はバスの線を切り捨てる検討を始めた。自宅から東京駅まで歩きや自転車で行ける連中もいるのだ。始発で来る連中よりも先回りしなければならない。

 

始発がダメ・早朝バスでもダメ、となると残りのオプションは2つ。最終電車で東京駅へ行き、そのまま行列に参加するか、あるいは東京駅に近いどこかに宿泊し、未明に東京駅に向かうかだ。やってきたバスの写真を撮って、「俺軍、暁の出撃」とツイートするのが楽しみだったのに、私は心底がっかりした。ネット世論を見ていると「始発前に並ぶとかなんなの?」と、私とは見解が相容れない人が多いのだが、今回、公式に「前日よりお並びいただくことはできません」とアナウンスされており、言葉通りにとれば20日(土)0:00からは並んでもOK、と言えなくもないのである。が、やはりこの年で氷点下になりうる外で寝ることはためらわれる。19日の20時頃には食事を済ませ帰宅できたのだが、数十分悩んだ結果、「お泊りコース」を選択することにした。今思うと一度行ってみたかったビデオボックスに泊まる絶好のチャンスだったのだが、今回はこれまたずっと行ってみたかった上野のカプセルに泊まることにした。2ちゃんねるに専用のスレがあり、ネットでは評判の良い宿だったのだ。予約の電話を入れ*3、荷作りに取り掛かった。

 

12月の東京で、朝の4時から8時までじっとしていられる服装。晴れではないが雨は大丈夫のようなので、DASパーカにジーンズ、分厚いスマートウールの靴下、上下のヒートテック、そして上だけTシャツとスエットを着る。万が一に備えてマフラーとユニクロの薄手のウールのセーターもバッグに入れた。それにニットキャップと手袋。グレゴリーのデイ&ハーフに例のレジャーマットやiPad、充電関連の小物、カイロ、薬その他もろもろを詰め込んだら結構な荷物である。お湯を沸かして、F&Mのアールグレイクラシックを淹れて、2本の保温水筒に注いだ。水筒をカバンに入れるとパンパンである。耳栓と箱ティッシュを持っていくつもりが忘れて、あとで買うことになった。念入りに歯を磨いて家を出た。

 

上野へ行く電車は遅い時間だったが混んでいて、しばらく座れなかった。1時間強で上野に着くと、12月下旬の金曜夜ということで23時頃でもすごい人通りである。何度か前を通ったことのあるカプセルだったが場所を間違えて覚えており、少し探して到着した。予約の時に指定しなかったせいで喫煙フロアをアサインされ、カプセル利用客用のロッカーがクッソ小さかったりと、「このカプセル褒めるとか工作員なの?」と思わされたが、軽く風呂に入って3時40分に目覚ましをかけてすぐに寝てしまった。

 

フロントで買った150円の耳栓*4をしていたとはいえ、カプセルにありがちな周囲のやかましさもなくスッキリとした目覚めが得られたので、カプセルとしては優秀な部類なのだと思う。謳い文句どおり一般的なカプセルよりも広めに感じた。3時40分に文字通り跳ね起きて、いきなりトップギアで身支度を整え、10分でホテルを出た。「600秒で支度しな!」である。上野駅前のタクシー乗り場へ急いだ。乗ったタクシーがゼロクラウン的なすげえいい車で、運転手さんとも話が盛り上がった。*5丸の内南のいい場所へつけてもらい、タクシーを降りた。「さあ、戦争の時間だ」、である。

 

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今回の販売場所は、丸の内南口ドームの特設ブース、という。ドームの中では、多くの人が行列を作って歩いている。歩いている? もう売り始めちゃった? ということはなく、列の整理だか圧縮だかをしているようだ。最寄りの係員さんに聞くと、最後尾は丸の内北口の方だという。最後尾に着いたのが、4時過ぎだっただろうか。

 

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進行方向に向かって直角に蛇腹状の列が形成されている。その列が断続的にそのまま進行方向に向かうので、ある程度進むと最初の順番は維持されず、横6、7人程度の太い行列となる。人口密度が高いのと、ときどき予告なく列が動くので、レジャーシートで寝るような目論見はご破算となった。この人口密度の高さでは、お茶をリュックから出して飲むのもためらわれる。SIGGの小さなボトルに入れた焼酎を飲んだりしたかったが、お酒を飲んでいては行けない場所(意味深)に行く予定がそのあとにあったのでガマンした。北口から並び始め、列が時折動いて、ステーションホテルのエントランスの先から進まなくなったのは5時かそこらだっただろうか。私が本来到着するはずだった5時50分には、すでに行列が5000人に達して、それより後から並んでも買えない可能性がある、と駅員が放送している、とネットでは囁かれていた。やっぱりバスでも間に合わなかったんだ。同時に自分のいる場所は前から数えておおよそ2000人から3000人であろうと思われた。状況はTwitterYahoo! リアルタイム検索と2ちゃんねるで随時チェックしており、発売が前倒しされて7時15分には販売が開始されたことを知った。

 

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前に2000人が列をなしており、7時15分に販売が始まっても、すぐに列が進むことはないのはわかる。が、並び始めてから一度も状況の説明がなく、列は9時半まで全く進むことはなかった。さすがにおかしい。地下に列の一部を動かしたのは知っている。私が到着時に目にしたのがその移動だろう。が、目に見えない場所で相当数の割り込みか、または想定外の事象が進行しているのではないか? と9時頃には思われた。一部では並んでる時にはすでに罵声大会だった、という声もあるが、私の周囲は安穏としたものだった。ネットでは販売中止かもよ、販売中止らしいよ、みたいな書き込みが見られるようになったのもこの時間帯である。

 

9時半、急遽列が動く。それもこれまでの順番は全く関係なく、ただ進行方向へ進む形で、である。軽めのモッシュ気味である。が、そんな異常な割り込みをする人もなく、しかし順番はグチャグチャに、南口出口外へ人が集まることとなった。このとき、大きく蛇行を重ねて我々のそばにいた、かなり行列の後ろの方だった人たちも、我々の列に流入したものと思われる。南口外には地下街へ降りる階段がある。この階段前でしばらく待たされた。ロープで一度に降りる人数を制限する形で、階段を降りた。初めに地下に並ばされた人がはけたので、空いた空間に我々を移動させたのだろう。また蛇腹な感じで他の数百人の人と一緒に順番を待った。地下では横一列の行列である。ネットでは販売中止がささやかれている。

 

10時20分ごろ、複数の駅職員が降りてきて、我々に正式に販売中止を告げる。理由は言わない。なんか怒鳴ってる客や数人で一人の職員を囲んで談判している客もいたが、私は職員の一人から中止の理由だけ聞いてその場を離れた。「危険だから」ということだ。直後に地下街にも「本日の東京駅100周年記念Suicaの発売は、お客様の安全を守るため中止となりました」という女声アナウンスが繰り返し流れ始めた。地上に出ると、さっきの階段前のスペースに人だかりが出来て罵声大会である。中の南口ドームではプチ暴動だったと聞く。

 

都営浅草線に乗りたかったので、「こんな思いをするのなら花や草に生まれたかった」と思いながら、遠回りをして宝町へと向かった。丸の内・八重洲間の行き方を知らないし、知ってても東京駅の混乱が酷かったのだ。いつもの私なら、「ひどいよ、あんまりだよ、こんなのってないよ」とでもツイートするところだが、その元気さえなかった。何もかもどうでもよかったのだ。

 

 

 

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その後趣味の集まり(意味深)があり、たくさんの人に会って話を聞いてもらい、お酒もたくさん飲んだのだが、この件に関しては*6全く気が晴れない。その理由を考えるために、今こうして金曜の夜から土曜の朝までに何があったのかを洗いざらい書いているのである。

 

記念Suicaが買えないことが確定したあの瞬間から、喪失感に酷似した強い虚無感を感じて、時間が経過するにつれそれは強くなるばかりだ。今日は朝起きてから、紅茶とブラウニー2つ*7しか口にしていない。まだSuicaは手に入れていなかったのになぜ喪失感なのか。それは私はあの時、転売厨としての自信を失ったからではないか。また、人生勝ち組競争からドロップアウトし、子孫繁栄競争に負け、せめて確実に勝てる安易でつまらない賭けにだけベットしてきたのに、そこでもまた負けるのか、という落胆ではないか。どれだけ努力したところで、これからもただひたすら負け続ける人生なのではないか、という諦念ではないか。

 

私は今回、記念Suicaを買いに行くにあたって、余計な出費はカプセル代の4,200円とタクシー代の2,500円*8の合計6,700円しかしていない。どのみち土曜は上京の予定だったのだ。が、報道によると購入のために全国から多数の人が訪れていたと聞く。旅費だけでも相当額になるだろうし、その旅費のうちの一部、または大半をJR東日本にこのカード購入のために支払っているのである。これは自作自演の誹りを受けても止むをえまい。JR東日本は、今回のこのカードだけは、希望者が誰でも入手できるように取り計らうべきであろう。私もその際には改めて求めるかもしれない。が、正直もう何もかもどうでもいい。いつかこのカードを入手できても、私はこの日に全力を尽くし、何の落ち度もなく、しかしあのカードを理不尽にも入手できなかったという空白を常に意識しながらこの先の人生を生きていくだろう。この空白はやがて私を蝕み、食らい尽くすことだろう。

 

 

 

なので今日はお部屋の掃除は中止、柏インターの噂の太郎で「両方大盛」とスタミナラーメンの大盛を食べて煮込みを10人前お持ち帰り、満天の湯で温泉セラピーしてきてもいいことになりました♪ヾ(*ゝω・*)ノミャハ☆

*1:もちろん定価ね

*2:というか転売目的だったけどいろいろあって萎えた。

*3:あの忌まわしい雪の夜の反省を踏まえて

*4:アイマスクとセット

*5:1Q84の冒頭、青豆が思わせぶりなことを言う運転手が運転する特別なクラウンのタクシーに乗ってたことを思い出したよね。結果として俺の世界もこのタクシーを降りたときから変わってしまったのかもしれない。

*6:趣味の集まり(意味深)は最初から最後までいつもと同じく楽しかった。行ってよかった。

*7:先日頂いたすげえおいしいやつのラスト2個♪

*8:ホントは2千円ちょいだったけどいつものアレが出た